福岡県八女市の「うなぎの寝床」は、九州筑後地方のものづくりを伝えるアンテナショップで、この地域で作られる工芸品、雑貨、食品といった生活用品を中心に取り扱っています。このうなぎの寝床のオリジナル商品「現代風もんぺ」は久留米絣の織元とともに作った同社オリジナルの商品で、2016年にグッドデザイン賞を受賞しています。
インドには、古代から受け継がれる「ブロックプリント」という手仕事があります。木の版(ブロック)に模様を彫り、数十メートルに渡る布に版画のように繰り返し版を押し当て、プリントしていく技法です。人の手によって手間と時間をかけて押される模様は、独特のかすれやにじみがあり、とても美しいファブリックになります。
このブロックプリントを作る際、プリントする布の下には作業台が汚れないよう別の布を敷いてあります。この下敷きとして使われた布は、一つのブランドの製造作業が終わった時点で交換され、廃棄されていました。この布を回収し、リユース(再使用)して生まれ変わらせているのが、エシカルブランドの「rétela(リテラ)」です。
ブロックプリントの製作の下敷きとして使われた布は、何重にも色が塗り重ねられ独特の柄と風合いを持ち、計算して作られたものはありません。この世に二つとして同じものがない珍しさと、機械で計算して作られたものには決して真似できない柄は、初めてみるものばかり。
ブロックプリントで使われた後、廃棄される前に生地を回収し、一晩お湯につけて柔らかくします。そして、三度の水洗いと天日干しを繰り返し、生地が乾くと裁断・縫製・検品といった工程を経て、ようやく商品としてアップサイクルされます。このように、通常廃棄される布を製品として蘇らせるには、非常に手間のかかる工程ですが、この作業もインドの現地で行うことで、持続可能な循環を目指しています。
うなぎの寝床とリテラのコラボレーションによって、鮮やかなオレンジとダイナミックな染めが特徴的なもんぺが生まれました。これは、rételaがこれまで手がけてきた『Un fabric』シリーズと同様に、インドのブロックプリントを行う際に、作業台に下地として敷かれている布を再利用した生地の一つで、2018年からバグルー村と呼ばれるジャイプール郊外にあるファクトリー協力の元、始まった新シリーズ『Bagru(バグルー)』という生地を使ったもんぺです。
ブロックプリントにはさまざまな方法があります。その中の一つ泥防染という方法は、色が染まらないようにする防染剤を作り、ダブーと呼ばれる黒土が元になった材料をウッドブロックでプリントしていき、その後染色することでプリントをしていない部分だけを染めるプリント方法です。通常のブロックプリントは、模様を付けたいところにウッドブロックでプリントをしていくのに対して、色をつけない部分にプリントするのは全く逆の方法ということになります。
泥防染プリントをする際の下敷きの布は、通常の製品として失敗した布を再利用しています。Bagruシリーズの生地は、この下敷きの布が交換・廃棄されるものを回収したものなので、本来は二度捨てられる機会があったものを再利用しています。印象的なオレンジ色は、泥防染で付いた泥を落とす際、100%天然由来のターメリック、オレンジなどで漬けて落とします。その時に同時に染色され、さらにインド藍が不規則に飛び散った力強いブルーが入った特徴的な模様です。
Bagruもんぺは、生地の調達から縫製に至るまでインドの現地の方にお願いしています。うなぎの寝床の型紙をインドへ送り、それを元にもんぺを作っていただいてます。もんぺの型紙が海を渡り、そしてもんぺという言葉自体も知られていないインドの方が、初めて作ったもんぺです。
この生地は、シャツやシーツ等に使われる、ソフトで目の細かいしっかりした触感が特徴的なキャンブリックを使用しているため、透け防止のためウエストからヒップあたりにかけ、生地を二重にしました。これにより、透けないだけでなく丈夫な造りになりました。サラサラしており、肌触りが気持ち良く洗濯してもすぐ乾くので、夏場や旅行におすすめです。
S | W | |
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ウエスト | 65〜85cm | 70〜90cm |
ヒップ | 110cm | 130cm |
股上 | 66cm | 66cm |