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車社会の地域に自転車を

のしごと

豊岡

のしごとの拠点は、2019年より兵庫県豊岡市に移転しました。もともとこの地域で生まれ育ったのですが、腰を据えて暮らすのは約20年ぶり。

久しぶりに暮らしてみて特に驚いたことの一つが圧倒的な「車社会」だということ。都会に出る前は免許もなく車を運転できなかったですし、都会で暮らすまではそれが当たり前だと思っていましたが、都会の暮らしを経験してみると車が中心になった生活に、違和感とこれからの暮らしに大きな不安を感じました。

もちろん車がないと生活ができない不便な地域に住んでいる方もたくさんいらっしゃいます。豊岡は雨の多い地域なので、車が必須なのも分かります。でも、100m先のゴミ捨てにすら車を使ってしまうこの地域にとても不安を感じました。今はよくても年を取って運転ができなくなったら。歩かないことで体が動かなくなってしまったら。そんなことをよく考えてしまいます。

車は確かに便利な乗り物です。しかし、豊岡に戻って毎日車を運転するようになると次第に体が重く歩くことが億劫になってしまい、車に乗るという行為に自分自身少しずつ違和感がなくなってきました。これが当たり前になるとほとんど歩かなくなってしまいそうです。ちなみに、東京に住んでいた頃、一日に歩く距離は平均約12000歩でしたが、これが豊岡では300歩ほどになってしまいました。

そして、車社会に対してもう一つの懸念は、地域の良さに気づかなくなってしまうことです。

伝所鳩

東京に住んでいた頃、自転車でどこまででも走っていけたし、気になるお店や風景があればちょっと立ち寄ることが気軽にできました。町中で知り合いとバッタリ会ってちょっと立ち話なんてのは日常茶飯事。そのままカフェに行ってお茶をしたり。それこそ世間話から新しい仕事が生まれることだってありました。しかし、車社会である豊岡ではそういったことはほとんどありません。都会だからできることだよと言う人も多いと思いますが、便利な車に頼らなければこの地域にだってできないことではないはずです。

人と人の距離が近い田舎。
自然豊かで美しい風景が広がる田舎。

そのどちらも田舎に住んでみて思うのは、ふと立ち止まって見る機会は少ないし、地域の方同士がコミュニケーションを取る機会もきっかけもそう多くはありません。田舎は人が温かいという言葉を聞くことがありますが、確かに近所の方は良くしてくれますが、それ以外の方とコミュニケーションを取る機会はほとんどなく、東京に住んでいた頃の方が人の繋がりが広く濃くあったように思います。

でも、車社会を少し止め、地域をふらっと歩いてみたり自転車で行動するだけで、田舎ならではの濃い人の繋がりであったり、当たり前すぎた風景や景色にもう一度目を留めることができるかもしれません。そんな淡い期待を持って、伝所鳩では新しいプロジェクトをスタートさせます。

車社会に、自転車を

レンタサイクル

伝所鳩では、東京の店舗を一緒に運営している「千輪」と共同して、レンタサイクルを豊岡で始めます。

東京・墨田区の鳩の街通り商店街の中、伝所鳩の一階にある「千輪」は、自転車本体を売らない自転車屋さんです。近年、直すよりも買った方が安い中国製の安価な自転車が増えたことで、大量に廃棄される自転車が生み出されました。そんな自転車社会をどうにか変えたいという想いから、千輪では自転車本体の販売をせず、「修理」と「自転車雑貨」の販売だけを行っています。

コロナにより公共交通機関を使わず、自転車で会社に出勤する方が増えるなど、自転車の需要は年々高まっており、それに付随したシェアサイクル事業が増加傾向にあります。しかし、そうした事業もうまくいくものばかりではありません。事業が継続できなければ、シェアサイクルとして投入された大量の自転車がまたゴミとして廃棄されることになり、これは世界的にも問題となっています。

そこで、伝所鳩と千輪が始めるレンタサイクルは、千輪の特性を最大限に活かしレンタサイクル用に新しい自転車を用意するのではなく、捨てられるはずだった自転車を再活用し、できるだけお金をかけずに復活させることにしました。新しくてオシャレな自転車に乗りたいという方も多いと思いますが、ぼくらがやりたいプロジェクトはそうではなく、環境に負荷をかけず持続できる自転車のある暮らしです。

レンタサイクル

今回、伝所鳩 豊岡店で始めるレンタサイクルの自転車は、東京で捨てられるはずだったものを引き取り、千輪がもう一度乗ることができる状態にまで二台の自転車(ママチャリと折りたたみ)を復活させました。ボロボロで誰も見向きもしなかった自転車たちですが、丁寧に整備してやることで軽快に走り、見た目も見違えるほど綺麗な状態に。新品ではないものの、それに匹敵するほど綺麗になりました。

使用する自転車にもこだわりました。単に捨てられる自転車ならどんなものでもいいわけではなく、ママチャリをはじめとした一般的なものに絞っています。その理由は、どこの自転車屋さんでも直すことができるから。車社会の豊岡には、自転車屋さんがたくさんあるわけではありません。もちろん数は少ないですが、豊岡店の近くにもお店はありますが、ロードバイクなどの特殊な自転車を修理できるところは限られてしまい、修理を断られるケースも多々あります。そのため、「修理ができ持続して乗ることができること」を特に重視しました。

この伝所鳩と千輪のレンタサイクルプロジェクトは、この整備された二台の自転車を伝所鳩のオリジナルにカスタマイズします。そして、東京から豊岡まで輸送し、最終的には伝所鳩 豊岡店にて貸し出しを行い、豊岡にお住いの方や観光で来た方に乗っていただけたらと考えています。

オリジナル自転車制作スタート

レンタサイクル

それでは、ここからは伝所鳩オリジナル自転車の制作をご紹介させていただきます。

オリジナル自転車を制作するにあたって特にこだわったのは、ボディのカラー。墨田店のイメージカラーがエンジ色なのに対して、豊岡店はグリーンがイメージカラー。いくつかのグリーンのスプレーを試してみて、イメージに近いもので塗装することにしました。

さらに、二台の自転車はサイズも形も違うため、色以外にも統一感を出せるようカラーリングだけでなく、タイヤの他に、グリップやサドル、ベルといった小物まで各パーツを徹底的に揃えて統一感を出すことにしました。

レンタサイクルレンタサイクル

それでは、まずは塗装を行うにあたり、必要なパーツだけを塗装しやすいように分解します。

自転車は、細かく分けるとここまで細分化することができるので、塗装したいところだけを簡単に色付けすることができます。分解の手間はかかりますが、塗装したくないところへのマスキングなどの必要がない上に綺麗に塗装ができるので、千輪さんのような優秀なメカニックが傍にいてくれるのは心強いです。

レンタサイクルレンタサイクル

分解が終わると塗装の前の下処理を行います。もともと貼ってあるステッカーを剥がせるところは全て剥がしていくのですが、古い自転車なので簡単に剥がれるところもあれば、粘着がしっかりと残ってしまうところもあって意外に根気のいる作業です。

そしてホコリなどの汚れを落としたら、ペンキがうまく乗りやすいようにプライマーと呼ばれる下処理剤を塗装する部分に吹き付け、約30分間乾燥させます。

レンタサイクル

プライマーが吸着したらいよいよ塗装開始。刷毛などで塗る方法もあるようですが、手軽さと仕上がりの綺麗さからスプレーで塗装することにしました。塗装は伝所鳩のメンバーで行ったので、プロの方の塗装に比べるとまだまだな部分ばかりだと思いますが、試行錯誤して仕上げた色なのでぼくら自身もとっても気に入ったグリーンです。

レンタサイクル

そして、グリップやサドル、タイヤといった各パーツは新しいものに交換。塗装したグリーンに合わせた色のパーツを予め注文しておき、そちらでカスタマイズを行いました。

伝所鳩 オリジナル自転車完成!

レンタサイクル

Before

レンタサイクル

After

レンタサイクル

Before

レンタサイクル

After

レンタサイクル

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レンタサイクル

After

レンタサイクル

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レンタサイクル

After

レンタサイクル

Before

レンタサイクル

After

レンタサイクル

Before

レンタサイクル

After

一緒にレンタサイクルをやってくれる方を募集します

レンタサイクル

伝所鳩のレンタサイクルは、現在二台。今後も数を増やしていく予定ですが、今回のように東京で自転車を直してから持ってくるのでは、コストも手間も時間もかかってしまいます。そこで豊岡や但馬地域で眠っている自転車を復活させたいと考えています。

乗らなくなった(乗れなくなった)自転車を放置してしまっているものがあれば、伝所鳩で引き取らせていただけないでしょうか。ぼくらが復活させてこの町で循環させていきたいと考えています。ただし、どこの自転車屋さんでも修理ができることが前提なので、ママチャリなどシンプルな構造の自転車のみとさせていただきます。

復活させた自転車は、豊岡にお住いの方や観光でこの町に来た方に、伝所鳩が一日単位でお貸しするとともに、宿泊業やお店を営んでいる事業者の方でレンタサイクルをお店でやりたいという方には、月契約等で自転車をお貸ししようと考えています。観光地などで車以外の選択肢の一つとして考えてもらえたら嬉しいなと思います。

今はまだ二台しかないので、できることは限られてしまいますが、ぼくらのように車社会を変えたいとか、レンタサイクルでこの地域を巡って欲しいとお考えの方はぜひ一緒に何かやりましょう。

(2020.06.30)

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