のしごとのトップ / 働かないための働き方 (Fikaのしごと)
都会で働くのも、田舎で働くのも、企業に勤めるのも、起業するのも、すべての選択と決断は自分でするもの。
でも、自分のやりたいことを貫いて決断できる人はどのくらいいるんだろう。
お金がなくなり生活ができなくなってしまったらどうしよう。周りからどう見られているんだろう。そんな不安から、自分が本当に決断したい選択をできないでいる。もしかしたらそんな人は多いのかもしれません。
自分たちが無理をしない生き方を実践するために、都会から地元に戻り山奥で自由に暮らす夫婦がいます。
兵庫県の北部、養父(やぶ)市。人口は2万4000人ほどの小さな町だ。
町中から車を走らせること30分。お店どころか民家もほとんどなくなり、人よりも動物に遭遇する方が多くなる。山と山の間をどんどん進んで行くと小さな集落が現れる。
養父市若杉(わかす)と呼ばれるこの集落は、およそ70人ほどが暮らす。
Cafe Fika(フィーカ)は、山奥にポツンとできたカフェ。
東京からUターンしてきた山下さん夫婦が、長い間空き家になっていた築約60年の古民家を買い、約10カ月間をかけ自分たちでセルフリノベーションし、2019年9月にオープンしました。
Fikaは、スウェーデンの言葉。友達や家族と一緒にお菓子を食べながら珈琲を飲むという意味があり、この場所でもいつもの日常をゆっくりと楽しく過ごしてもらえたらとの想いから、この名前が付けられました。
オープンして一年。こんな山奥でお客さんはいるんだろうか。そして二人は、どのように暮らしているんだろう。
山下 将幸さんにお話を伺いました。
34歳の将幸さんは、お店から車で一時間ほどの距離にある隣町の朝来市出身。
北海道から沖縄までさまざまな地を転々とし、特殊な経歴を持つ。この場所へやって来る直前は、東京でカフェを経営していましたが、これからの人生設計を考え共同経営者だった仲間にお店を託しました。
たくさんの地を旅してきた将幸さんにとって、地元は特別な魅力があったわけではありません。しかし、実家が近く子育てがしやすいという点で、地元へのUターンを決めたと言います。
「いろんなところを旅して、自然はどこでもいっぱいだし、ご飯はどこもおいしい。人もどこも温かいから、地元に魅力があったというより、住み慣れてたのが大きいです。だから、子供が生まれたり何かあれば頼れる実家の近くでありつつも、二人とも知り合いがいないこの集落で一から暮らしていくことにしました」
住む場所を決める上で重視した点の1つが、地区の日役(ひやく)の数。日役とは、道や溝の掃除、草刈りをして、村のインフラを住民同士で支え合い維持する活動のこと。お店の営業日である土日に行われることが多いことから、できるだけそういったことが多過ぎない地域を探したそうです。
では、この場所はどうかというと、若い人が減り日役はなくなり、昔からあった文化や行事も、しかたなく簡素化されつつある。少し寂しさもあるが、そういったことに煩わしさを感じる若い人にとっては、人が少ない地域はある意味住みやすいかもしれません。
同じ集落に住む人たちでも、一年に数回しか会うことはなく、散歩していても出会う人は限られる。車もほとんど通らないので東京から引っ越して、不便さや孤独感を感じることはないのだろうか。
「ネットが繋がるか、amazonが届くかはかなり調べたので、週一回にまとめて買い物に出るほか、足りない物や売っていないものは、ネットで早ければ次の日に来ます。不便じゃないですか?と言われることも多いですが、別に今すぐ欲しいものってないし、少し我慢すれば手に入ります」
「ここにないのは、イベントや体験施設と多種多様な人に出会える可能性なので、必要な時だけ都会に行けばいいと思ってます。それにそこまで人と関わっていくタイプでもないので、孤独に感じることもありません。二人ともインドア気質で本を読むのもゲームも好きで、家にいる方が合ってて、昔ニートをしてたこともありますし(笑)」
東京でカフェを経営し、山奥に自分たちでお店を作った将幸さん。イベントを主催していたこともあり、とても行動的な人物のように見えるが、20代の頃はニートやホームレスを経験したとサラッと話してくれました。
「北海道の大学をすぐに辞めて、半年以上家から出ない生活をしていました。一日20時間くらい寝て、目が覚めたらオンラインゲームを繰り返して、ご飯を食べるのも三日に一回になって、誰とも喋らないから頭の中で会話ができてるつもりでも、口が動かなくなりました」
会話もできなくなってしまった将幸さんは、コミュニケーション能力を取り戻すべく、沖縄の山の上にある自給自足で暮らす村のバーテンダー募集を見て応募。そこで働くことで少しずつ会話ができるようになっていました。その後、いろいろな地を訪れたことで、地元を見つめ直すきっかけになったと言います。
「旅をして地元が改めていいところだと分かったんですが、都会を知らずに田舎がいいよねっていうのは違うので、東京に行きました。ところが、居候してた家を急に追い出され新宿で野宿をしてたら、会って二日目の人に家と仕事を紹介してもらえて、白いたい焼き屋さんの店舗を任され始めることになりました」
「その後に、別の友達からお店を一緒にやらないかと誘われ、そのまま5年くらいお店をしました。でも、子育てをしたいなと思ってこっちに帰ってきたんです」
「この話、だいぶ端折ってますけどね。主人は、書けないくらいおかしな人生で、話始めたら朝になっちゃいます。でも一つ言えるのは、ほんとに人に恵まれてるんです」と、横で話すのは、妻の美妃さん。
美妃さんは、高校を卒業後、地元の企業に就職。7年間勤務した後、東京へ上京。蔵前にあるゲストハウスなどで働いた後、Uターンする。
二人は同じ地域の出身ではあるものの、出会いは2011年。将幸さんが主催していた音楽イベントがきっかけで知り合い、地元で平凡に暮らしていた美妃さんの人生が大きく変わることになります。
「出会いは、主人が地元で主催していた音楽イベントで、共通の知り合いに声をかけてもらって行きました。初めて会ったのは25歳の時でしたけど、地元にずっといる人間からすると、今まで出会ったことのない人で驚きました」
この音楽イベントは、将幸さんが地元の若者が都会に出ていき、このままでは町が消滅してしまうことに危機感を感じ、若い人たちだけで何かおもしろいことはできないだろうかと企画したもの。2011年にスタートし代表を変わりながらも、これまで4回開催されました。
「イベントの後すぐ主人は東京に戻ったので、それから一年くらい遠距離でした。そろそろこの先どうするかを決めようと思った時に、地元から出たこともないし、一人暮らしをしたいとか都会にも興味なくて、むしろザワザワしてるのは苦手だったけど、親も好きにしたらいいと言ってくれて、仕事をやめて東京に行くことにしました」
美妃さんは、高校を卒業してから7年働いていた地元の企業を辞める大きな決断をする。どうして決断できたんだろう。
「夢があったわけじゃないし、辞める理由もない。お金がなくなるのも怖かったのと、別に不幸ではなかったんです。でも、このまま人生終わってええんやろうかとずっとモヤモヤしてた時にイベントに誘ってもらって行ってみたら、主人みたいなぶっ飛んだ人がいたり、東京からお手伝いに来てる人もいて、違う世界の人たちと出会って足を踏み外していきました(笑)でも、行ってよかったって今は思います」
入口の土間で靴を脱ぎ中に入ってみると、昔ながらの建物の良さを残しながらも、改修工事によって新しく生まれ変わった空間が広がっています。天井が少し低い造りも、なんだか居心地の良さを感じます。
この建物は、市役所の空き家バンクを活用して巡り合い、購入価格は倉庫や畑が付いて150万円。当然ながらそのまま住める状態ではありませんが、当初から自分たちでリノベーションすることを前提に2018年に購入。リノベーションするための予算は、200万円を準備したそうです。
ここから夫婦二人の古民家改修が始まり、なんと資格などがいる電気やガス工事以外は、全て二人で。しかも、やり方はほとんどyoutubeやネットで調べて行いました。
「空き家バンクの方も一番おすすめしない物件だったんですけど、即決しました。すぐ住める家は意外と高かったり、家具がそのまま残った物件が多くて、それを下見しても気持ち悪いし、町の方だと畑付きが少ないんです」
「ここは畳が剥がしてあって、綺麗に片付いてたし、畑を家とは別に借りるのは行くのも大変で続かないので、家の前なのもちょうどよかったんです。あと、子供ができても危なくないよう大きな道路に面していない集落の中というのも希望に合ってました」
建物が安いとは言え、家を所有すると税金などの固定費はかかってしまいます。しかし、この家の税金はわずか数千円程度。さらに、電柱が立っていることで不動産収入もあるため、家の税金の半分くらいはそれで賄えてしまえるそう。
「東京に住んでた時の家賃で、田舎だと家が何軒も買えます。ただでさえ働くのが嫌だったのに家賃のために働いてたようなものだし、それでもぜんぜん足りないくらいでした。でもそれでも働かなきゃいけなくて、楽しかったけどすごいしんどかったです。だから、もういいかな」
東京の生活には、心残りはありませんか?
「ないです。東京で出会った友達に会いたいと思ったり、遅くまで飲んでもすぐに帰れたのは良かったけど、もう住みたいとは思わないし、たまに行けたら十分です」
以前、将幸さんが経営していた東京のお店Cafe&Bar totoruにお邪魔したことがある。
そこで、トイレのきれいなお店はいいお店だと語っていたのを思い出して、Fikaのトイレも見せてもらった。もともとは男女別々のトイレがあった壁をぶち抜き、一つの広い空間にリノベーションしたそうですが、これも二人だけで完成させたという。
二人とも経験はほとんどないに等しいが、youtubeをひたすら見てやり方を調べ、見様見真似で工事を進めてきた。一つ一つ工事の跡を見ていると、やろうと思えば素人でもここまでできるのかと驚くことばかりだ。
しかし、シロアリの被害などで想定よりも老朽化は激しく、途中で予算が足りなくなってしまいクラウドファンディングを実施。目標金額を達成して資金を確保できたものの、春に予定していたオープンは9月に伸びてしまったり、資格がなければできない工事にまで手を出してしまい、行政指導を受けることもあり、トライアンドエラーで進めてきた工事は思うように進まなかった時も多かったと言います。
将幸さんは、とにかく前向きで失敗しても気にせず突き進んでいくタイプ。それに対し、美妃さんは頭で先に考えてしまうタイプで、うまくいかない時はいっぱいになってしまい、何度も挫けそうになってしまいました。
「やったことない触れたこともないことが多くて、漠然と何をしていいかさっぱり分からず、何もできなくて前に進めない時が結構あって、それでも主人はひたすら一人で頑張ってて、その姿を見て病むみたいなこともありました。うちらは待ってても誰もやってくれないし、二人でやるしかないので、やるんじゃなかったと後悔したことも多いです」
特に大変だったところはどこでしょうか?
「私はテーブルです。作る予定はなかったのに、オープン三日前に作ることになり、絶対無理!というか作りたくなくて拒否したんですけど、地区の方にオープニングパーティーのチラシを配ってて、ないと地べたで食べてもらうことになるので、一台を時間かけて無理やり作ったんです」
「でも、その後なんで私は机なんて作ってるんだろう?と涙が出て爆発しました。そしたらすっきりして一台目を作ったのと同じ時間で残り全てを作ることができました。だから、若干気に入ってなくて、今ならもっとできることがあったなと思います」
ほぼ二人だけで完成させたお店兼自宅。
まだまだ工事が終わっていない部分も多いですが、一階の店舗スペースは西側と東側が大きな窓になっており、日の光がたっぷりと差し込んでくる。取材中も日の光が時間とともに移り変わっていき、時間帯によってガラリと雰囲気が変わるのも印象的でした。
人の声も車の音もほとんどせず、虫の鳴き声と風が通り過ぎていくだけの贅沢な空間です。
ただ、いいことばかりではありません。時期によって差はありますが、山の間に家があるので日が差し込むのは10時半くらいと遅く、日が暮れるのも早い。洗濯物は乾きづらく、山に近いので鹿に畑を荒らされたり、時にはエサを探しに熊が山から降りてくることだってあるそうだ。そして、美妃さんを悩ませたのが、虫問題。
「地元なので虫が多いのは知ってましたが、山が近いのでなおさら多いです。工事中ちょうどカメムシの時期で、作業時間と同じくらい捕獲してたり、薪ストーブをつけると大量発生してヒステリックになったこともあります。スズメバチの巣がいつの間にかできることもあって、虫だけはどう頑張っても慣れないので、苦手な方は辛いと思います。特に古民家なんて買ったら隙間だらけですし、洗濯物にも虫が付きます」
「あと、いろんな意味で人付き合いが増えます。地区の行事や集まりは、多かれ少なかれあるので、苦手な人は難しいと思います。田舎暮らしに憧れるのは自由ですが、都会から勢いでくるときついので、お試しができるならした方が絶対いいです。思ってる以上に何もないし、遊びたい人には全くおすすめしません」
料理を担当する将幸さんは、東京のお店で5年間キッチンを担当し、経験を積んできた。さらに、日本ならず海外をも旅し各地のさまざまな料理を食べ、自分たちのお店で出そうと決めたメニューは、バターチキンカレーとタコライス。それに加えて、チーズケーキなどのスイーツとコーヒーやお酒。
バターチキンカレーを選んだ理由を教えてください。
「カレーはとことん好きで最初に決めました。ちょうどスパイスカレーが流行ってましたが、お客さんの層が上になると思ったので、食べ慣れてるカレーに一番近いスパイスカレーで、リピートもしてもらえそうという狙いで決めました。特別な味じゃなくてふいに食べたくなる安心する味を目指してます」
「ただ、たまにうどんや子供が食べれるメニューを求められることもあるんですけど、子供や特定の層に来て欲しいわけではないんです。やっぱり自分たちが作りたいもの、おいしいと思うものを出すのが一番で、うどんを出すのは違うかな。だから、敢えて案内もしないですけど、うどんしか食べれないなら持ち込んでもらってもぜんぜんいいんです」
自分たちが好きなものを出す。それに加えて重視したのは、無理なく続けられることでした。
「地元の但馬鶏とか但馬牛を使ったものだと原価が上がり、かといって売値を上げられるわけではないし、作られてる方も少なく取引先がなくなる可能性もあります。引き取りも交通費がかかるので、特殊なものではなくどこでも手に入る食材と自分たちが好きな料理で無理なく長く続けられることを考えました」
その甲斐あってか、一カ月に一度カレーが食べたくなって来てくれる方がいたり、ここで飲むコーヒーがおいしいと来てくれる方も少しずつ増えているんだそうです。
お店があるのは山奥。周辺には何もなく何かのついでに立ち寄る場所では決してないので、わざわざ訪れるきっかけや理由を増やすために、新しい取り組みも始まっています。
それはお店の一角にある本棚。
「ついでに来てもらえるお店ではないので、ここに来る理由をもう少し増やそうと思って、本の販売を始めました。効果が出るのは数年スパンだと思いますが、少しずつ売れてたり、一人でずっと読んでる方がいたりするので、本も読めてごはんも食べれるから行こうといったそんな理由を増やしていきたいと思っています」
本棚には、出版社から委託で販売しているものと、自分たちで独自にセレクトしたものが並ぶ。
「きれいに並べてある本棚って遠慮するので、気軽に取れるように敢えてきれいには並べず、ジャンルもなんとなくであまり分けてません。裏テーマが二つあって、一つが友達の家の本棚。人の本棚を見るのって楽しいから、それを見て店主と喋りたいと思ってもらえたら嬉しいです。もう一つは、子供ができた時に本棚があると世界が広がるんじゃないかなって思います」
「このあたりは本屋さんが少ないけど、本屋さんの良さって目的だった本じゃないものとたまたま出会って世界が広がること。カレーを食べに来て、置いてあった本でなにか世界が変わればなと思います。売れ筋はネットで買えばいいけど、ランキングに載ってない本っていっぱいあって、ここはそういうものと出会える場所になって欲しいです」
Fikaの営業日は、週末土日のみ。一週間のうち二日間しか営業していないので、平日は仕込みが大変なのかと思いきや、生活ができる最低限しか働かないと決めているんだそう。
「平日は本を読んだり畑をしてます。もともと働きたくなくて、楽しいことをずっとやりたいんです。働くって一生の中で取られる時間が大きいですよね。でも、働きたくない人が多いのに、家を建てるのに何千万も借金して働く。これだけ空き家があるならそこに住めばいいし、新しいものを買う楽しさも分かるけど、それで働く仕組みに組み込まれてしまうことや、働いてないといけない感じ、そもそも働く必要があるのかってことに疑問があります」
できることなら働きたくない。そんな二人の想いがあるものの、日本で暮らす以上は、最低限働き収入を得なければ生活することはできない。そのために選んだのが土日だけ営業するカフェ。
「どこかに勤めて週5日とか一日8時間働かないといけないのは違うし、どこかで働くのと自分たちが楽しんで働くのとでは、同じお金でも価値が違うと思います。だから、お店が夢だったわけじゃなくて、暮らしの中に仕事があったり、二人のプライベートを持ちながら、自分の好きなことや楽しいことを、どうお金に絡ませるかを考えカフェを選択をしました」
「すごい儲かってるわけではないですが、それでぜんぜん暮らせてて、外食も普通にするし、旅行にも行きます。以前、イベントに出店したら三日で一カ月暮らせる売り上げがあって、じゃあ残りの27日は何してもいいという新しい選択肢も出てきました。だから仕事や働くを軸にせず、暮らしの中の一つとして考えれば、働くのウエイトが少し下げられるのかなって」
美妃さんは、社会に出てからずっと地元の企業に勤めていたので、働いていないことに若干の後ろめたさや不安が最初はあったそう。でも、一度地元を出て再び戻ってきた今は、その考えは変わったと言います。
「日々、毎日を生きていきたいんです。前は働いてない自分や平日に何もしていないことが悪いように思ってたんですが、別にそれで生きれないわけでもないし、誰かに迷惑かけてるわけでもない。特別なことをしたいわけではなくて、楽しく無理しない範囲でお店をやり、生きていけるだけのお金をいただき、当たり前の生活を続けたいんです」
「私はそれですごい楽に生きられてるので、それぞれがそれぞれでやったらいいのかなって。地域の人とも仲良くしたいし、別に孤立したいわけでもないから、適度な距離感で自分がしんどくない生き方をしていけたらなって。その中でイベント男みたいなのが横にいてくれて、たまにハッピーなことがバーンとあったり、ハッピーじゃないことがドーンとあったりする。それで十分です」
お店がオープンして一年。これから考えていることを教えてください。
「昔は、みんなで何かをやるのが楽しくて、力を合わせるとすごい大きいこともできました。でも、今は個人でどこまでできるのかに興味があります。だから、仕事を夫婦や家族で扱える以上のことはしないと決めてて、人を雇うことはせず自分たちでできる範囲のことをやっていきたいと思います」
「もしかしたら、みんながそれぞれの仕事でその道のプロになって、タイミングが合ってさらに大きなことをしたいと思うかもしれないけど、今はそれにぜんぜん興味が湧かないんです。誰かと何かをやるより、いつでも身軽にいたいし、固まっていたくないので、このお店もずっと飲食店かというと分からないし、変わってないかもしれません」
人は、それぞれがそれぞれに選択や決断をして人生を決めていく。都会で暮らすのも、同じ会社で働き続けるのも、自分が決めたことなら決して悪いことではありません。
でも、昔と比べて今は自分で選択し決断できる時代だ。山下さんたちのように、今の暮らしや働き方に疑問があるとしたら、一歩踏み出してみることで全く違った人生が待っているかもしれない。
人生を決めるのは、結局は自分の選択と決断なのだから。
撮影:だしフォト