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何のためにお店を作るんだろう

のしごと
伝所鳩 豊岡

こんなところにお店を作って誰が来るんですか?

伝所鳩豊岡店の改修工事中に、何度も大工さんから尋ねられた質問だった。

残念ながらその質問に即答することはできなかったし、今も答えることはできない。誰が来てくれるかはお店を開いてみなければ分からないし、事業計画を徹底的に考えてお店を作っているわけでもない。たまたま空いていた建物を利用しただけだから、立地を調べてこの建物を選んだわけでもない。むしろ、地元だからお客さんがいない(来にくい)場所なのは、調べるまでもなく分かっている。でもやりたかった。この建物が良かった。

やりたいだけでお店を出すことの何が悪いんだろう。

お店は、続けられなければ意味がないのも分かる。でも、自分たちがやりたいお店じゃなければ続けていても楽しくないし、それなら別の仕事をした方がよっぽどいい。ぼくらが今やりたいお店はたくさんお客さんが来てくれて、売上の見込みが立つものではない。そもそもお店の経験値はほとんどないから、儲けるつもりなら得意なウェブで戦った方が間違いないだろう。

だったらお店なんてやらなければいいと言われるかもしれないけど、やりたかった。誰のためでもない。自分たちのためにお店をやりたい。だから、大工さんと一緒に汗だくになりながら改修工事もやったし、補助金も助成金も使わず他で稼いだ自分のお金だけでこの場所を完成させた。

年々災害が増え、やりたいことがこの先できなくなるかもしれない。だから、お金と時間をかけてでも今この場所を作ったことに後悔はない。誰もお客さんがこない日が続くかもしれないし、場所ができてもすぐにオープンできるわけじゃないから続くと思う。でも、やりたいことが実現していくことは、他の仕事にもきっと良い影響が及ぶはずだ。

現に、豊岡に帰ってきてワクワクすることなんて一つもなかったけど、この建物と向き合い自分で工事を始めてからワクワクしない日はない。果てしない工事に呆然とした日もあった。ここ2年は悲しい別れも辛い出来事も多かった。東京を離れてぽつんとこっちで暮らすことにも虚しさを感じていた。でも、この建物のおかげで新しい出会いも、すばらしい出来事もあって、辛いことも乗り越えてこれた。

この場所にお店を作っている、それがこの地で生きる糧だ。

お店作りはずっと続くけど、来週いよいよ工事は終わる。

(2020.07.12)

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