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何をやるかではなく誰とやるか

宮田織物「のしごと」

宮田織物は、1913年に久留米絣の工房として福岡県筑後市で創業。昭和40年に『わた入れはんてん』の生産を開始すると、最盛期には年間で50万枚もの生産量がありました。他社の追従を許さない高品質なはんてん、独自の生地を使った婦人服ブランドの展開ができるのは、糸選びから、織り、デザイン、そして縫製や販売までを自社生産するこだわったものづくりがあってこそ。時代とともに変化し、進化を続ける織物メーカーです。

宮田織物

「人ですかね。会社自体もそうですけど、外部の関わってくれてる人がすごい今の自分には合ってます。お客様が主導で動くんじゃなくて、どっちかって言うと今は自分が作りたいものを作れるし、支えてくれる人もすごいいて、誰とやるかっていうのはすごい大事だなって思います」

宮田織物のものづくりのスタートを担うのは、企画課。その中でも、糸を選ぶところから生地そのものの企画から、織りのデザインまで、全ての始まりはここからと言っても過言ではない、根底を担う企画課のテキスタイル部門。

企画課の中で一番若手で、テキスタイルデザイナーとして働く江崎さんにお話を伺いました。

未経験でもやる気と想いは誰にも負けない

宮田織物

江崎さんとぼくらが出会ったのは、1年以上も前の東京のビックサイトでの展示会の時でした。そこでお話を聞いたときには、もうずいぶんと長くここで働いているものだと思っていたら、入社してまだ二年。

改めて、この会社のことを伺ってみました。

江崎さんは、全くの異業種から転職で、ものづくりをしたいという外せない想いのもと、たまたま縁あって出会ったのが宮田織物だったそうです。

「もともとはCM制作会社で働いていましたが、地元が筑後で帰ってくることになって、せっかくなら楽しいと思える自分が考えて手を動かしてできるものづくりの仕事をずっとしたいなと思って、ハローワークで条件を伝えたらヒットしたのがここだけで、その時は宮田織物のことを正直ぜんぜん知りませんでした」

「異業種なので大丈夫なのかなって不安はありました。でも、ハローワークでも女性が働く環境として長く働かれるんだったらおすすめしてくれて、中小企業の働き改革で賞を受賞してて、女性のことをすごい考えた会社だということや、初心者の方でもぜひという募集でした」

江崎さんが応募したときは10名の方からの応募があり、既に織物やファッションのデザイン経験を持っている方も多く狭き門でした。しかし、その中でテキスタイルデザイナーとして採用されたのは江崎さん一人だけだったそうです。

宮田織物

テキスタイルデザイナーの仕事は、織物のデザインをすること。糸の織りや染色などの加工方法を考えて生地を作るところから始まり、企画から製造までを手掛けるため、幅広い知識が必要となります。そのため、入社後はすぐにデザインや企画を担当するのではなく、まずは織物の基本を知るために、工場に入り整経や引き込み、織機を一通り経験してきたそうです。

「まずは、織機の仕組みを習って、うちでできることは何かを三カ月くらい勉強しました。うちは30~40年前から開発してきた生地のアーカイブが財産としてすごい残っているんです。色の付け方や柄の感じを参考にこういうの作れるんじゃないかとか、昔のものをブラッシュアップすることが最初は多かったです。でも、それは今でも結構やっててネタは尽きないしずっと飽きないです」

実際にここで働いてみてどうですか?

「織物の基本を全く知らなかったのが逆によかったのかなって思います。ここは、制限がないというか何でもやらせてもらえる感じなんです。普通のアパレルなら、今年の流行りはこの色、この柄って考えだと思うんですけど、うちはそういうのを意識はしますが基本的にはなくて、できあがったものがよかったら、それを使ってモノを作ればいいじゃないかって考えなんです」

「それに、社長も工場の人たちも距離が近くて基本的にものを作りやすい環境を考えてくれてるので相談しやすいです。一貫体制なので、理解があるのとないのとでは私たちの取り組み方もぜんぜん変わってくるので、じゃあやってみたらと言ってもらえるのは、すごいものづくりしやすい環境だなとは思います」

妥協しないのは支えてくれる「人」がいるから

宮田織物

宮田織物の最大の特徴は、自社で一貫生産していること。一般的なテキスタイルの仕事が分業制なのに対し、自社一貫生産の場合は、全てをここで完結します。企画課は、デザインから、織機の構造、設計までの全てこなしていくので、良くも悪くも自分たちで調整が行えます。

「すごい難しいのが、普通のテキスタイルの流れは、デザイナーが柄を作り、その次の設計部分は任せる分業制ですが、うちの場合はそこを全部一人で作り上げていくので、妥協がすごい生まれやすいんです」

「自分が難しいものを作れば作るほどその後の工程は自分も大変だし、工場の人たちにも説明しないといけないから自分を苦しめるんです。でも、工場の人たちは不思議とやろやろって言ってくれるので、すごいやりやすいですね。難しい柄になればなるほど下の人の時間もどんどん費やされるんですけど、江崎さんがやりたいならやればいいやんって言ってくれる人がいるから、すごいありがたいです」

年間に作る生地の柄は50近くに及びます。これだけの柄を生み出すのに、今年の流行を追いかけることも、これを作るんだと頭で考えることもありません。たまたまこぼれた水が美しいように、心動かされるものの中にこそ、アイデアへ繋がる答えやヒントは隠されていると教えられてきたそうです。

「当時いらっしゃった部長は、こうしなさいと具体的に言うのではなくて感じろって人だったので、宮田織物とはこうあるべきだと教え込まれてきました」

「部長と主任のツートップに最初に会った時『あ、おもしろい人がいるな』って思いました。そういうのって結構大事じゃないですか。この人と仕事するから頑張れるみたいな。もちろん製品を届けるお客様のことが第一にあると思うんですけど、私はそのへんを大事にしたくて、ここには良い意味で変な大人がいっぱいでした(笑)」

ものづくりを楽しみ続けるために

宮田織物

宮田織物では、企画課メンバーが中心となり、ネットを使ったものづくりの発信に力をいれています。その中の一つが、昨年4月からスタートした『宮田織物研究室(みやらぼ/miya labo)』。楽しんでものづくりをする。をスローガンに掲げ、自分たちが作りたいもの、欲しいもの、やりたいことを自由な発想で取り組んでいます。

「何か作れば売れる時代じゃなくなり、社内に作りたいって意欲がないといいものは作れないと思うんです。それはみんなもんもんとあって、こういうの作りたいって気持ちはあっても営業さんからの指示で作るという流れから殻を破れないのはありました」

「もっと自分たちが作りたいもの着たいものを作って、その結果お客様が喜んでくれたら絶対いいのになっていうのは昔から感じていて、それができるといいなと思って、企画のメンバーを巻き込んで、発信する場を作ってみませんか?と提案したらすぐ動いてくれました」

宮田織物

こうして発足した宮田織物研究室。情報発信だけでなく、昨年から特に力を入れてきたのが、『中わた無しはんてん』の開発。わた入れはんてんの形をベースに、冬の防寒着としてだけでなく、外出着としても着られるわたが入っていないはんてんとして『羽織(はおり)』が生み出され、福岡デザインアワード2018に見事入賞を果たしました。

「最初は、あまり経営戦略的なものはなく、単純にうちの生産の流れって、冬場のはんてんを目指して備蓄するために年間通して作っていて、ものが一番動く冬が過ぎると停滞してしまいます。だけど、『おもしろい生地ですね』って意見をすごくいただくことがあって、通年で喜んでもらえる商品ができないか、生地の良さを着てもらって分かるアイテムができないかと話しをしていました」

「そんな時に、たまたまサンプルで一重の羽織が上がってきて、表も裏も楽しめてわたも入ってない、夏素材から起毛かけた冬素材まであって、これなら通年楽しんでもらえるのができるじゃないかって話から、うちにある柄をたくさん使って羽織を作ってみたのが始まりです」

こうして生み出された羽織は、従来の羽織と比べ身幅はスリムに、袖のボリュームをすっきりさせることで、今のライフスタイルにも合うようデザインし直されました。

「他の商品と比べて明らかに違うのは、年齢層が20代から70代まで興味もってもらえるんです。形的にも肩が上がらない人でも羽織れるし、デザインも和っぽいテイストだけど今の現代に馴染みつつ少し粋な雰囲気があって、年齢層も男女も選ばなくていいじゃないかって感じています」

「今一番やりたいことは宮田織物をもっと広めていきたいというのがありつつ、この地域で頑張っていきたいのはあります。うち一社が頑張っても続いていくものにはならないので、羽織というアイテムを通して他の織屋さんと一緒に頑張っていけるきっかけや、地域の久留米織の発展に繋がればいいなと思ってます」

生まれ育った地域でも、あまり地域のことを知る機会はなかったと言います。今のように積極的に関りを持つようになったのには、きっかけがあったのでしょうか?

「やっぱり人ですかね。会社自体もそうですけど、外部の関わってくれてる人がすごい今の自分には合ってます。お客様が主導で動くんじゃなくて、どっちかって言うと今は自分が作りたいものを作れるし、支えてくれる人もすごいいて、誰とやるかっていうのはすごい大事だなって思います」

おごらない強さ

宮田織物

最後に、宮田織物の魅力はなんだと思いますか?

「近くに織屋さん何件かあって同じような織機を使ってますが、やっぱり宮田織物の生地はぜんぜん違うなってのはすごい感じてます。さらにそれがアーカイブとして残っているのは、めんどくさいことをちゃんとやってきた先輩方がいたから。それがあるから今もおもしろい柄ができてきてて、100年以上続いてきた理由はそういうところにあるんじゃないかなって思います」

「それと、みんながむしゃらにやってますが、その感じがあまり出てないんです。おごらないというか、この生地ができあがるまでに、これだけの工程と時間がかかり、技術があってできてるから、もっと自慢というか自信を持ってやればいいのにって入社した時からずっと思っているんですけど、みなさん普通にやっちゃうんです。そんな紳士的というか、謙虚な姿勢にすごいぐっときます」

宮田織物

宮田織物のしごと展
特集コンテンツ

宮田織物のしごと展
日時:2019年1月19日(土)~31日(木)
会場:東向島珈琲店(東京都墨田区東向島1-34-7)

創業106年の老舗織物メーカー 宮田織物
久留米絣の織元から一貫生産へ
この会社もこの仕事も好き
若手が活躍するためにできること
何をやるかではなく誰とやるか
何年経っても毎日が試行錯誤
自分が着たいと思う服を作る
作るのも着るのも気持ちの良い服
オリジナルはんてんが完成

(2019.01.16)

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